「月商2000万超」を叩きだす訪問介護事業者の秘密。

今月は行政関連情報は一旦お休みさせていただき、タイトルの通り「月商2000万超」を継続的に維持している訪問介護事業所(A社)の経営者B氏の興味深い経営事例をご紹介させていただきたいと思います。

B氏は1970年生まれの45歳。

現場職員として着実に経験を重ねた後、知人と共に独立し、同社を起ち上げたのがおよそ約7年前だそうですが、僅か7年の内に、今や確固たる経営基盤を持つ、堂々たる会社を築き上げることに成功されています。

思わず「信じられない」と叫んでしまいたくなるぐらいのA社の月次売上ですが、B氏の経営哲学をうかがえば、その数字も現実性を帯びてくるから、不思議なものです。

B氏の考えは、世の中で言うところの一般的な「訪問介護」事業に対する観念とは、或る意味、「真逆」と言っても過言ではないものでした。

でも、「そもそも論」から考えると、B氏の考え方の方が理に適っているのではないか、と自然に思えてしまう、、、B氏の経営哲学とは一体どのようなものなのでしょうか?

様々な切り口のエピソードがあるのですが、今日は、中でも特に重要なポイント・発想を一つ、抜粋して、皆様にお伝えしたいと思います(訪問介護事業者様は勿論、訪問以外の事業者様にもお役に立てる内容だと思いますので、是非、読み進めて下さいね)。

B氏の経営と一般の訪問介護事業者のそれとの決定的な違いとは一体何か?

結論から申し上げますと、それは、訪問介護事業を介護保険法上の観点からだけではなく、「サービス業」という側面からもしっかりと見つめ、その姿勢を事業に明快かつ具体的に反映させている、という点に在りました。

言葉にすると陳腐に聞こえてしまうかもしれませんが、特にその違いを明確に感じたのは、ご利用者やご家族からの保険外の要望に対する、氏の姿勢・考え方でした(以下、会話の再現です)。

「訪問介護って、介護保険の制約上、ご利用者やご家族が望まれていることに気が付きつつも、対応出来ないサービスの範囲って結構ありますよね。
現場にいるホスピタリティ精神旺盛なヘルパーからすれば、ご利用者やご家族の気持・要望は理解できるしそれほど手間がかかる訳でもないので、つい、対応して差し上げたい、と思ってしまう。
でも、それを一度やってしまうと、あれも、これも、と、様々お願いが増えることも考えられるし、また、派遣される職員によって、対応サービス範囲のバラつきを生み出す要因にもなってしまう。社長の会社では、そのようなストレスに対してどのような対応をされているのですか?」

「(しばらくの沈黙の後)私達って、一体、何の為に仕事をやっていると思います?急に話を変えてすみません」

「いえいえ。何のため、ですか、、、、それは勿論、ご利用者の自立支援という介護保険法上の側面と、ご利用者・ご家族に心から喜んでいただきたい、という側面の両方がありますよね。。。」

「ですよね。私も全く同感です。
だから、私たちは、よほど無茶な依頼や、我々の仕事に対する誇りを踏みにじるようなご要望でない限り、その場で可能な限り、柔軟に対応して差し上げるように職員を教育しているんです。
念のため、断っておきますが、勿論、コンプライアンスは遵守していますし、過去、行政からこの点で指摘を受けたことは一度もありませんので、そこだけは勘違いしないで下さいね(笑)。」

「(驚きながら)そうなんですか、、、、それは、とても素晴らしいことだと思いますし、多くの事業者がそのような対応をしたいと思っていることと思います。
でも、他方では、コンプライアンスや前述のような問題も発生しかねませんし、経営的にも、人件費の問題(=サービス提供時間が延び、余分の時給を支払わなければならなくなる)で現実的には難しく、諦めている事業者も多いようにも感じています。
社長はその点をどうやってクリアーされているのですか?」・・・・・・


実は、この質問をしながらも、それまでのB氏とのやりとりを思い出す中で、既に答は見えてきていました。

その答とは、A社独特の、組織人員構成に在りました。

実は、B氏は確固たるこだわりのもと、通常の訪問介護事業所では考えられない人員体制、即ち、40名のヘルパー職員の内、31名を「正社員」として雇用しているのです(2015年5月末段階の数字)。

B氏は私の言葉に続いて、次のような説明を追加してくださいました。

『多くの企業では、訪問介護という仕事を人材派遣事業と捉え、「如何に人件費を変動費化させるか?」ということに心を砕いています。
勿論、このこと自体、決して悪いことではありませんし、経営的に考えると極めて合理的ではあるとも思います。
でも、その一方、必然の結果として、先ほどのようなご利用者やご家族からのインフォーマルな要望に対して柔軟に対応することが難しい仕組みが出来上がってしまう。
パートの職員にサービス残業をさせる訳には行きませんものね。
ところが、これが正社員中心だったらどうでしょう?
彼らは月給で仕事をしており、5分や10分、或いは、仮に30分程度サービス提供時間が伸びたとしても、それに伴い、付加経費が発生する訳ではありません。
勿論、終了時刻が遅くなり、残業が発生してしまう、という側面もありますが、それは、管理側のタイムマネジメント上の問題です。
私は「サービス業」という観点における自らの想いを実現するため、リスクを承知で敢えて、正社員中心の雇用形態を採ることを決断しました。
勿論、固定費は格段に重たくなりますが、その分はサービス力と営業力で取り返せばいい。
また、うちでは、直行・直帰も原則、禁止しています。
毎朝、皆で顔を合わせ、朝礼を行い、「よし、今日も一日、皆でナイスなサービスを提供していこう!」と掛け声をかけてから、朝一番の仕事へ送り出す。業務が終了した後の帰社時には「今日も一日、お疲れ様!」のねぎらいの言葉と共に、当日のサービス提供に関する報告や相談を受ける。
そんな、普通の会社では当たり前のことが実践できるようになります。
加えて、正社員中心の雇用形態を採ることで、定期的な研修への全員参加等、会社全体としてサービスレベル向上に対する取り組みもやりやすくなるし、組織としての一体感も非常に醸成しやすい。
先ほど、「リスクを承知で」とか「敢えての決断」とか言いましたが、サービス業としての姿勢を全うしようと思えば、正社員雇用の方が、実は、自然なんだ、と私は思うんですよね。』

B氏は自ら現場で実践を積み、現場で悩み、制度と想いとのギャップに安易に妥協することなく、また、「慣習だから」「他がそうしているから」等の理由に組織が支配されることを許さず、自分の信念に基づいた答を見出すことに成功した、とも言えるでしょう。

ちなみに、この経営姿勢に呼応する形で、高いモチベーションを維持した正社員の中には、総支給額として40万を超す月給を受け取ったり、家を買う訪問介護社員も出てきているそうです(B氏によると、2015年5月末段階の訪問介護正社員の総支給額平均は約29万円だったとのこと)。

介護報酬ダウンの影響が拡大する中、多くの事業者が先行きに不安を感じている昨今ですが、一方では、こんなにも賢明で、こんなにもたくましい経営者がいる、という現実もある。こんな事実に触れるだけで、何だか勇気が湧いてきませんか?

業界を問わず、様々な企業の様々な取り組みや考えに触れ、何か感じ、その感性で自信を振り返ることは、成長・進化を目指す経営者には不可欠な行動習慣です。是非、そのような姿勢で本事例を見つめていただき、何らかの気付きや学びを得ていただければ幸いです。

更なる有益な事例情報が入手でき次第、皆様にどんどん発信してまいりたいと思います。

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