デイサービス事業者A社は何故、円滑に介護予防事業を起ち上げる事が出来たのか?

事業者の実例をご紹介



先月以降、処遇改善加算の加算率発表以外にさほど目新しい動きは出てこなかった2017年1月。


そこで今月は今までと趣向を変え、口コミを中心に介護予防事業を円滑に起ち上げることに成功したA社・B社長の事例をご紹介させていただきたいと思います。


総合事業の全国開始が直前に迫り、要支援単価の低下に翻弄される事業者が多い中、本事例は何を我々に教えてくれるのか?是非、そんな視点でお読みいただければ幸いです。

A社・B社長が何より大切にしているもの



最近、総合事業の動きも見据える中、特にリハビリデイ等で認定外高齢者向けサービスの展開を検討されている事業者様に出会う事がよくあります。


そんな中、A社の事例が頭にあるせいか、「この事業の目的はどこにあるのですか?」と敢えてうかがうことがあるのですが、多くの事業者様からの回答は概ね次の3点でした。


「地域でニーズがありそうだから」


「保険サービスの収益が落ち、保険外サービスで少しでも売上を上乗せ・回復せたいから」


「将来、要支援・要介護者になるかもしれない方々と早めに接点をつくっておけば、ゆくゆくは当社サービスをそのままご利用いただける等、保険内サービス事業にも好影響を及ぼすことが出来るかもしれないから」


勿論、上記の考えが正しい、とか、間違い、という類の話ではありません。


ただ、今回ご紹介させていただくA社は、実は、上記3つの何れも目的に据えていた訳ではありませんでした。では、彼らの目的は一体何だったのか?


それは、「既存ご利用者の願いを叶える」この一点だけでした。


「要支援1や2、特に要支援1の方はADLが回復する見込は十分にあり、運動する機会を増やすことが出来さえすれば、要支援認定から外れる可能性は高いし、かつ、ご利用者本人もそれを望んでいる場合が多い」


ご利用者と日々触れ合う中、B社長はそんな想いを強く抱いていたそうです。とはいえ、介護保険事業の枠組みの中では、要支援1の方に週2回、週3回、と回数多く来ていただく事は経営的にも難しい。何とかこの矛盾を解決出来ないか、、、、


そこから生まれたのが、「保険サービスとは別で週に1回、既存ご利用者向けに保険外で運動指導サービスを提供する」というアイデアでした。


B社長はこのアイデアをもって、要支援1のご利用者(Cさん)のところへ向かいます。


「Cさん、前回お聞かせいただいた、『出来れば週にもう1回多く通いたい』というお話、社内で色々検討してみたんですが、やはり経営的には対応が難しく、Cさんのご希望をそのまま叶えて差し上げることは難しい状況です、力不足で本当に申し訳ありません」


「ただ、我々としても、Cさんには絶対に元気になっていただきたい。その為に何が出来るか?について色々考えたのですが、例えば週末、デイサービスが休みの日曜日に、保険外で運動指導サービスを提供させていただく、という案は如何でしょうか?保険は活用出来ませんが、1回約3時間、2,500円程度いただければ、喜んで対応させていただきたいのですが、、、」


その話を聞いたCさんからは「是非、お願いするよ」とその場で即、返事。


「ありがとうございます。では、せめて、週末のご利用時にも送迎はやらせていただきます」


こうして、先ずは要支援1の方を中心とした「既存ご利用者のための介護保険外サービス」が始まったのです。


当然ながら、認定の入り口に立ったばかりの要支援1のご利用者にとって、週1回の運動と週2回の運動とでは、ADLの改善スピードも、効果も格段に変わってきます。予想通り、Cさんの運動機能もどんどん回復されていきました。そんな中、Cさんの回復ぶりを見ていた要支援2のご利用者(Dさん)が、デイサービス中にCさんに尋ねます。

「最近、以前に比べて見違えるほど元気になってきたんじゃない?何かやってるの?」


「あぁ、週末に1回、自費の運動指導サービスを受けているんだ」


「あぁ、以前、B社長が言っていた、あのサービスか。そんなに元気になるのなら、俺も行ってみようかな」


こうして「保険外サービス」が賑わい始め、一人、また一人、と、ご利用者が認定から外れる、という嬉しい状況が起こってきました。


しかしながらこの話、このままキレイな美談で収まる訳ではありません。
要支援1の方がお元気になり、認定がはずれる、ということは即ち、保険サービスのご利用者が1名減少してしまう、ということです。経営者であれば、この矛盾に悩むことも当然あるでしょう。


しかし、B社長は、この事実に直面しても、自らの軸はぶれませんでした。


「ご利用者の「元気になりたい」という希望を叶えるために始めたのだから、これが正しい姿だ」


他方、経営としては、「いいことをやっているんだから利益が上がらなくてもいいじゃないか」では済まされません。このギャップに直面したB社長はその後、どう対応したか。


「当社は、“介護保険から卒業出来るデイサービス”です」


「“卒業後も運動指導を継続し、元気でいていただくことをご支援するデイサービス”です」


という新たな価値を地域に発信し、口コミも伴い、結果、現在では「介護保険サービス」と「介護保険外サービス」が両輪となって事業全体が好転する、という、善循環が生まれた、という訳です。

「制度」だけではなく、「顧客」を見つめる



A社の事例は単価変動に翻弄される中、つい狭い視野に陥りがちな我々に対し、「顧客志向」という言葉の持つ重要性・深さをあらためて教えてくれているように思います。


制度の議論は少し横に置き、目の前のご利用者や地域が何を望んでいるのか?について真剣に考える事で、ひょっとすると成功確度の高い事業アイデアが見えてくるかもしれません(正にA社のように)。


是非、そんなニュートラルな目線であらためて自らの周囲を見つめ直してみることをおススメする次第です。

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